Webデザイナーとして制作会社に入るとき、多くの場合はポートフォリオを何十時間もかけて作り、面接で「デザインが好きです」とはっきり言っています。
入社直後は実際にPhotoshopやFigmaを触り、ワイヤーフレームを組み、色やフォントを決める作業が続きます。
最初の数か月は充実しています。
しかし一年ほど経つと、一日の時間の使い方が変わります。
午前中はクライアントからの修正メールを確認し、ディレクターと仕様を詰め、午後は前日のデザインを修正し、夕方から新規案件のラフを作ります。
退勤予定は19時でも、実際にPCを閉じるのは22時を過ぎることが増えていきます。
好きで始めたWebデザインなのに、帰宅後にデザイン系のサイトを見る余裕がなくなります。
Webデザイナーの現場で起きていること

辞めたいと感じるきっかけは一つではありません。
修正回数とスケジュールの現実
例えばLP制作の案件で、初稿を提出してから三回修正が入るのは珍しくありません。
色味変更、フォントサイズ調整、CTAボタンの位置変更といった細かい修正が積み重なります。
修正指示はSlackに箇条書きで届き、期限は「本日中」と書かれています。
別案件のバナー制作も同時進行しているため、優先順位を考えながら作業します。
制作会社では一人で複数案件を抱えることが多く、進行管理は自分で行う必要があります。
タスク管理ツールに締切が並び、遅れが出るとディレクターから確認が入ります。
好きな作業であっても、時間に追われると集中力が落ちます。
修正のたびにデータを保存し、バージョン管理をし、サーバーにアップロードする作業が続きます。
デザインそのものよりも周辺業務に時間を使っていると感じる瞬間が増えます。
残業と給与の確認
給与明細を見ると、基本給に固定残業代が含まれている場合があります。
例えば月45時間分のみなし残業代が設定されていると、45時間を超えた分が追加で支払われるかどうかが問題になります。
実際の労働時間を記録していないと、超過分があるか分かりません。
制作会社ではタイムカードが形だけになっていることもあります。
帰宅が23時を過ぎる日が週に三日続くと、体力が落ちます。
朝起きるのがつらくなり、通勤電車で立ったまま目を閉じる日が増えます。
好きなWebデザインの仕事でも、睡眠時間が削られれば集中力は下がります。
それでも「好きで選んだ仕事だから」と自分に言い聞かせることがあります。
好きなことを仕事にしたのに辞めたくなった!



好きなことを仕事にしたのに辞めたくなったと感じても、制作現場の具体的な状況を思い浮かべた瞬間に言葉が止まります。
抽象的な不安ではなく、目の前で動いている案件の映像が頭に浮かぶからです。
進行中の案件
例えばコーポレートサイトのリニューアル案件で、トップページのデザインは校了直前、下層ページはまだワイヤーフレーム段階という状況があります。
毎週火曜15時にクライアントとのオンライン定例があり、次回はデザイン提出日になっている。
ここで退職を申し出たら、その打ち合わせには誰が出るのか、現在のデザイン意図を誰が説明するのかという現実的な問題が浮かびます。
さらに広告バナー案件が並行している場合、来週月曜から配信開始のキャンペーン用バナーを6サイズ制作中ということもあります。
ABテスト用に色違いを3案ずつ作り、入稿形式も媒体ごとに調整している途中で退職を言い出せるかどうか。
Photoshopのレイヤー構造やフォントの指定、書き出し設定は自分のやり方で組んでいるため、急に別のデザイナーに渡すと確認作業が発生します。
その負担を具体的に想像すると、簡単には切り出せません。
Slackとタスク管理
Slackのチャンネルには案件ごとのスレッドが並び、担当者欄には自分の名前があります。
タスク管理ツールでは締切が赤く表示され、未完了タスクが複数残っています。
この状態で退職を申し出れば、それらのタスクは誰かに振り直されます。
会社の体制の問題だと理解していても、目に見える形で自分の名前が紐づいていると、責任を途中で手放す感覚が強くなります。
毎朝の進捗報告で「今週中に初稿提出します」と宣言したばかりの案件があると、その言葉を撤回する形になります。
進行表の更新やクライアントへの連絡を誰が行うのかを考えると、退職の話は単なる意思表示ではなくなります。
上司との面談
退職を申し出たあとの面談も現実的な場面として頭に浮かびます。
会議室で退職理由を聞かれ、長時間労働や固定残業代45時間を超えている可能性について説明する場面を想像します。
「業界では普通だ」と言われたらどう答えるか、「もう少し頑張れないか」と引き止められたらどうするか。
評価面談で「期待している」と言われたことを思い出すと、その期待を裏切る形になるのではないかという考えが出てきます。
退職が受理されるまでの期間も気になります。
法律上は意思表示から二週間で退職できますが、就業規則で一か月前申告とされている会社もあります。
その間、朝礼や定例会議で顔を合わせ続けることを想像すると、空気が変わるのではないかと不安になります。
機材とデータの整理
Webデザイナーは会社支給のMacBookや外付けSSD、Adobe Creative Cloudのアカウントを使っています。
退職日までにどのデータを会社サーバーへ戻し、どのファイルを削除するのかを整理する必要があります。
ポートフォリオに使用できる制作物の範囲が契約書でどう定められていたかも確認が必要です。
こうした実務を一つずつ想像すると、退職は単なる一言では終わらないと分かります。
次の打ち合わせ日程、配信開始日、未完了タスクの数、固定残業時間の数字といった具体的な情報が頭に並び、その重さで退職の言葉が出なくなります。
制作現場では、この具体性が行動を止めます。
好きで選んだ仕事だからこそ、途中で抜けることへの抵抗が強くなります。
その抵抗が、辞めたい気持ちと実際の行動の間にある壁になります。
好きなことを仕事にしたのに辞めたくなった!Webデザイナーが退職代行を使った話
「Webデザイナー 退職 言い出せない」と検索すると、退職代行のサイトが表示されます。
料金は三万円前後と書かれています。
弁護士が対応する場合は五万円を超えることもあります。
退職代行を使えば、会社への連絡は代行業者が行います。
自分は出社せずに退職日を迎えるケースもあります。
ただし、未払い残業代の交渉や有給消化の交渉は、弁護士でなければ対応できません。
一般の業者は意思を伝えるだけです。
ここを理解せずに依頼すると、期待していた対応が得られないことがあります。
退職代行を使う場合でも、会社支給のMacBookや外付けHDDは返却が必要です。
制作データの扱いも確認しなければなりません。
法律と現場の間で考えること
法律上、期間の定めがない雇用契約であれば、退職の意思表示から二週間で退職できます。
就業規則に一か月前と書かれていても、民法上は二週間です。
ただし、実務では引き継ぎや有給消化の調整があります。
制作現場では案件の区切りを考慮することも多いです。
好きなWebデザインの仕事でも、労働時間や評価制度が合わなければ続けられません。
退職は分野を否定することではありません。
制作会社を辞めても、事業会社のインハウスデザイナーとして働く道や、フリーランスとして活動する道があります。
まとめ
Webデザイナーが好きなことを仕事にしたのに辞めたくなる背景には、修正回数の多さ、複数案件の同時進行、長時間労働、固定残業代の仕組みなど具体的な要因があります。
退職を言い出せない理由は、案件への影響や上司との面談への不安です。
退職代行は意思表示を代行する手段ですが、交渉には弁護士が必要です。
重要なのは、仕事内容と労働環境を分けて考えることです。
好きな分野であっても、現在の職場が合わない場合があります。
法律と実務の流れを理解し、自分にとって現実的な選択肢を検討することが必要です。














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